神奈川県三浦海岸および津久井浜沖、南からの風が強く吹き、空は晴れ渡り、時おり遠くに富士山がその壮大な姿を見せてくれる。海にはたくさんのウインドサーファーたちが揃い、日本一の霊峰をバックに凌ぎを削っている。なんとも爽快な景観だ。
例年、極寒のイメージが強い「JPWAアマチュアスーパースラローム」だが、大会初日の11日は日差しが強く、さほど寒さを感じさせない。もちろん 水温は……。前の週に行われた「掛川サーフスラローム」同様に強い風が吹いている。しかしこの海面には波がたっていない。スラローマーにとってはほぼ最高のコンディションだ。今大会のエントリーは約130名。アマチュアスラローマーたちにとって最上級の舞台が整った。


インサイドもアウトサイドも南西の風がしっかりと吹いている。開会式、そしてスキッパーズミーティング時にはアウトで16ノット以上の風が吹き、さらに上がってくる予報だ。10時、まずアウトでのスペシャルクラスがスタートした。インサイドからスタボーでスタートし、3マーク回航でインサイドへ向かってフィニッシュのマーク設定。ヒートを待つ選手たち、インサイドでレースするオープンBとビギナーの選手たち、そしてサポーターやギャラリーもビーチで観戦できる距離でのレースだ。オープニングレースの第1ヒート、1stマークへまず飛び込んできたのは“オールラウンダー”596 青木和広、そして“元ナショナルチームメンバー”8 井上幾郎が続く。スラロームは、1stマークトップ回航が断然有利だ。しかし第1ヒートは8 井上がトップを取り、続いて“関西期待の星”J1919 生田宏行、596 青木は3番手へと転落。今回のようなハードコンディションでは、そのまま逃げ切りはプロでも難しい。マークでうまくコースが取れなかったり、ジャイブのミスも多発。ブローで飛ばされたり、接触もある。艇速も延びたり、延ばさなかったりと、思いのままにレースを運ぶ選手は皆無だ。選手たちの心境は突き進むか無難に済ますか、勝負するかセーフティーか。ファイナルまでのサバイバルレース、波乱も多く、予測のつかない展開が次々と続いた。






スペシャルクラス第1レースファイナルに残ったのは、
8 井上幾郎、J1919 生田宏行、596 青木和広、121 中井忠則、766 井上隆、J13 村瀬正臣、3 大数加光治、45-1 美濃口政己、38 濱口泰、96 山田良作、以上の10名となった。
メンズ1stレースファイナルの前に行われたウィメンズ1stレース。1stマークに飛び込んできたのは“男性的レーシングフォームをもつ娘”J168 依田桂子。続くのは“鎌倉のプリンセス”31 岩井清香、そして311穴山“パイン”未生。フリーライドセイルで挑む311 穴山は、2ndマークで一気にトップに立ち、そのまま3rdマーク、そしてフィニッシュへと逃げ切った。一方、J168 依田は4番手へと転落するも、なんとか3番手までアップ。このレースを皮切りに、終始トップに絡む311 穴山に、311依田らほかの選手たちが挑むレースが繰り広げられることになった。



11時になる前に早々とスペシャルクラスファイナルがスタート。下からグングン延びてくる選手のセイルNo.は? ん? 誰だ!? ヒート表に載ってないぞ!ファイナリストたちの怒号が飛ぶ。なんと次からのレースに構える選手が、スペシャルクラスファイナルと同時にコースに入り込んできたようだ。


なんとかその選手が逃げるように去った後、1stマークへ飛び込んできたのはJ13 村瀬と596 青木、そして“三浦のアントワン・アルボー”45-1 美濃口政己が続く。逃げるJ13 村瀬と596 青木。しかしこのときの45-1 美濃口のスピードは本物のアントワン並み。国産車とドイツ車のパワー勝負(なんじゃこりゃ!)。一気にスピードを増した45-1 美濃口は3rdマークを無難に回航し、ダントツのトップでフィニッシュ。しかも自身の記憶ではメジャー大会初のトップフィニッシュだ。
風はどんどん上がってくる。スペシャルクラス1stレース終了後、アウトではすぐさまオープンAクラスのヒートがスタート。インサイドではビギナー、オープンBクラスが行われている。アウトと同様に3マーク回航の本格スラロームレースだ。


風は終始20ノット以上、マックスで30ノットはあっただろう。中にはいつものレーシングセイルではなく、取り回しのしやすいノーカムセイルで挑むメンズも表れた。アウトサイドのスペシャル、オープンA、インサイドのオープンB、ビギナー、ともに次々と休む暇も無くヒートが進んでいく。
そしてスペシャルクラス第2レースを制したのは、9月に行われた「第9回全日本アマチュアアップウインド選手権」を制し、アップウインド・スラロー ムの二冠を狙う“クラッシャー”11 長谷川篤史。日没間際に行われた第3レースは、昨年度の覇者“ミスターストイック”3 大数加光治がトップを獲った。
毎レース、トップフィニッシュが替わる大混戦。しかし暫定首位に立つ選手はその中にはいない。安定した実力を発揮し、3レースすべてでファイナルに残った選手、“鎌倉の好青年”121 中井忠則が暫定首位、596 青木和広が暫定2位となって初日が終わった。

初日とはコンディションが変わって北からの風が吹いた。この風向はこの時期の津久井浜・三浦海岸のトレードだ。
ややビーチよりの海面に初日と同じ3マーク回航のコースが設定され、アウトではオープンAクラスからスタートし、一気にヒートが消化された。
初日4レースが行われ、311 穴山未生のスピードが際立ったウィメンズだが、ほかの選手も黙ってはいない。第3レースでトップを獲ったJ168 依田桂子がこの日も311 穴山に肉薄するレース展開を演出した。スタートはいつもJ168 依田が出る。しかしいつの間にか311 穴山がかわす。しかしJ168 依田も黙ってはいない。第5レース、最終レグでは逃げる311 穴山を低速でJ168 依田が追い上げる。フィニッシュギリギリで抜いたか!? ギャラリーの心をアツくする名勝負だったが、ハナ差で311 穴山がトップに。
さらにウィメンズ第6レースでは再びJ168 依田がトップを獲るが、大きく離れたポイント差は縮まらず、結局ウィメンズ優勝は311 穴山となった。

オープンAクラスはこの日は1レースを消化。サイドが変わったコースに苦戦するも、2日間続いたハードコンディションに選手も慣れたようで、順調なレース運びを見せる。そしてこの第3レースを制したのは、838 安江謙一。初日の第1レース3位、第2レース3位、そして1位という好成績。この後、オープンAクラスはヒートが行われなかったのでクラス優勝は838 安江謙一となった。
スペシャルクラス第4レース。なんと初日暫定首位の121 中井忠則がイチコケ、第3レーストップの3 大数加光治もイチコケという波乱が起きた。さらに“異なる視界をもつオトコ”J26 竹中朋幸がトップ通過で復活の狼煙を上げ、2回戦で初日暫定4位の11 長谷川篤が敗退と、誰が勝つか予想のつかない展開が続いた。

この第4レース、並み居るベテラン、上位常連の選手を抑えて、注目に値する選手がファイナル進出を果たした。中学生のJ281 賀来健夫だ。親のプロ選手JPN28 賀来耕一郎に鍛えられたセイリングは将来のワールドカッパー像を期待させる。初日のハードコンディションには翻弄されていたようだが、比較的マイルドな今日のコンディションなら思い通りの勝負ができるかもしれない。
スペシャルクラス第4レースがスタート。飛び出したのは、“お祭りオトコ”32-2 白藤幸則。しかし“流浪のベビーフェイス”J33 忽那敏章、596 青木和広、227 小林英聖が追い上げる。32-2 白藤は失速。コース取りのミスか。注目のJ281 賀来は中盤にいる。トップフィニッシュはJ33 忽那が切った。J281 賀来は5位でフィニッシュした。


4レースすべてのトップが異なり、ファイナリストも顔も毎レース違う。カットレースがあるので、トップフィニッシュした者にはもちろん優勝の可能性が残っていた。しかしここで暫定の首位に立ったのはトップフィニッシュは無いものの、4レースすべてでファイナルに残った596 青木和広だった。
風が若干落ちてきたため、この時点でヒート進行が難しくなりオープンクラスAの第4レースは無くなった。スペシャルクラスもアウトからスタート、2マーク回航に変更され、第5レースが始まった。
ファイナルまで駒を進めたのは、
181 鈴木誠、J30 照山幸子、1117 大館弘、J1919 生田宏行、227 小林英聖、JPN24 井津上典洋、11 長谷川篤、8 井上幾郎、3 大数加光治、45-45 中嶋基となった。
1117 大館は前週に行われた「掛川サーフスラローム」で超ハードなコンディションながら、プロ選手を抑えて7位入賞した実力者だ。今大会、第3レースで3位フィニッシュしたが、ほかのレースで実力を発揮できずにいる。ここで爆発なるか? またJ30 照山はスペシャルクラス参加唯一の女性選手だ。これまでの4レースで2レースファイナル進出し、このレースでファイナル進出3レース目。男性陣を抜き去 り、入賞を狙う。一方、暫定首位の596 青木和広は最後のレースでファイナル進出を逃したが……。
第5レースファイナルがスタートした。が、リコール!これまでほとんどリコールが無かったにも関わらず、この大事なレースでリコール、失格したのは、JPN24 井津上典洋と1117 大館弘 !!!
再度スタートが切られたのは15時。飛び出しのは、3 大数加だ。追う、11 長谷川。1stマークは3 大数賀、インをつく11 長谷川。しかし、3 大数賀がセイルを返すところで、11 長谷川が接触し、両者沈。“クラッシャー”11 長谷川、今大会何度目の接触だ!? F1鈴鹿GPでプロストにぶつけたセナ? しかしスラロームは原則ノールールだ。勝負に行った11長谷川、かわせな かった3 大数賀がここで首位争いから脱落となった。そしてそこをうまくかわした45-45 中嶋がトップに躍り出る。ここまで目立てなかった“ナカジ”45-45 中嶋がとうとうトップに立った。ケガの影響でしばらく大会欠場が続いた45-45 中嶋だったが、ここで復活だ。1stマークは大混戦。3 大数賀、11 長谷川ふたりとも中々セイルが上がらない。ふたりをうまくかわした45-45 中嶋以外、ふたりが邪魔でなかなか前に行けない。45-45 中嶋を追うのは227 小林英聖とJ1919 生田宏行だが、先行した45-45 中嶋との距離はかなりある。





丁寧に2ndマークを回航する45-45 中嶋、追うのは227 小林とJ1919 生田だが、その距離は縮まらない。45-45 中嶋もトップを確信し、余裕のサインでフィニッシュを飾った。今大会5人目のトップフィニッシャーだ。

このレースですべてのレースが終了した。スペシャルクラス5レースすべてのトップが異なる。すべてのレースでファイナル進出を果たした選手もいない。カットレースも発生する激戦だ。
集計が終わり、表彰が始まった。
スペシャルクラス優勝は、終始安定した成績を残した596 青木和広となった。



ビギナークラス表彰

オープンBクラス表彰

オープンAクラス表彰

ウィメンズクラス表彰

スペシャルクラス表彰
写真と文 JPWA広報委員・中川昌幸
photo & text by M Nakagawa
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